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2009.01.13 Tue
さて、その頃。
大阪の渡邊家でも『練乳イチゴ』をめぐる争いが勃発しようとしていた。
「あ〜〜めっちゃ、暑いなぁ」
渡邊家の末っ子である金太郎は昼寝から起きてくると、何気に冷蔵庫がある台所までフラフラと歩いていった。
そして言うまでもなく、真ん中のところにある冷凍庫の取っ手を掴んで扉を開ける。
ガラガラ……。
そこは呆気ないくらい、軽い感じで開いてしまった。
中には、キレイにまとめられている白飯。
それと、数々の冷凍食品が詰め込まれていた。
「なんや、冷凍食品ばっかりやん。ちぇっ、シケてやんの……。なにか、食いもんでもないかなぁぁ」
金太郎は、冷凍庫の中に手を入れると、ガサガサと冷凍食品をかき分けながら奥に進めていく。
「……んっ?」
探しているうちに、彼は何かを見つけた様子。
ガッツリとつかんで引き上げてくると、彼の手にはイチゴ味のアイスであった。
「おぉぉぉ……っ、アイスやん。誰やねん、こんな奥に隠しとったんは?ま、誰でもエエねんけど」
金太郎は、ニンマリとした笑みを浮かべながら、早速、ビニール袋を破いて中からアイスを取り出してくる。
「ほんなら、いただきま〜す」
彼は、大きな口を開けるとパクッとくわえて食べながら自分の部屋に戻っていくと、一気に食べてしまったようである。
「……ホンマに暑いなぁ」
そういいながら、Tシャツにジーンズ姿の謙也が、部屋から出てくると台所にいこうとしていた。
彼は台所にやってくると、冷蔵庫に向かったようである。
そして中腰になって、真ん中の冷凍庫を開けてゴソゴソしていた。
「!?――。ないやんけ」
謙也は、もう一度、冷凍庫の中を掻き回すようにして探してみたが……やっぱり、ない。
「だ、誰やねん!!!俺のアイスを食ったヤツは?」
彼はシャキッと立ち上がると、リビングルームでマッタリとしていた蔵ノ介のところに向かった。
「おい、蔵ノ介!おまえなんか……俺のアイスを食うたんは?」
バンッと、壁を叩きながら凄まじい剣幕で蔵ノ介に迫ってくる。
「何、何をいうかなぁ……謙也。俺がおまえのアイスを食ってか!そんなわけないやろう。俺、甘いモンが苦手やちゅうこと知ってるやろ」
蔵ノ介がムッとしながら言い返すのももっともである。
彼は、甘いものが苦手だったのだ。
「そーやったな……。ちゅうことは、さっき帰ってきたあの二人(小春&ユウジ)なんか?」
「いや、それもちゃやろ。たしかに小春とユウジは甘いモンが好きやけど、それはケーキ系やからな」
「それやったら、誰が食うたんや?」
「親父と侑士は甘いモン好きやけど、まだ家にはおらんし……光は、俺と同じで甘いモンが苦手ときてる」
「それやったら、一体誰や?」
蔵ノ介と謙也は、必死に頭を回転させていた。
「あ、おるわ。一人だけおるで」
「誰や?」
「ひょっとしら、金ちゃんとちゃうか?」
「あぁ、金太郎のヤツか。考えられるな。それやったら、一回、あいつに聞いてくるわ」
「ま、まだ小学生やから泣かすなや」
「わかってる、わかってる」
謙也は、不敵な笑みを浮かべながら2階に向かった。
その数分後。
「うぎゃぁぁーっ!」
弟の叫び声が聞こえたのは言うまでもない。
| 『真田家の懲りない面々』シリーズ
| 10:03
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2009.01.12 Mon
「おい、周助!」
「大きな声を出さなくったって、ちゃんと聞こえているって」
「あぁ、悪いな。昨日、作っておいた氷のことだが、おまえが使ったのか?」
景吾は、冷凍庫を開けて氷が落ちていると思われたプラスチックのケースを覗いてみたが、氷が1つもなかったようである。
そこで、たまたま近くを通りかかった周助に声をかけたというわけだ。
「僕?僕が使うわけないだろう。あ、そーいえば、夜中だっけ。キヨが冷凍庫をかけていたのを見たけど」
「アイツか……」
「でもさ、キヨが氷を使っていたまではわからないけど。それと――」
「あん?」
周助は、顔をあげるとまだ冷凍庫の中を見ていた彼のほうをむいた。
「あの子は、意外と気が強いから言い方には気をつけたほうがいいと思うよ」
「それは、わかっている。何年、兄弟をしていると思っているんだよ」
「そーだけど。景吾って、怒り出しちゃうと見境がなくなっちゃうでしょ」
彼は、フフッとしながら話していた。
景吾は、痛いところを突かれてキュッと眉間に皺を寄せたが、すぐに落ち着きを戻した。
「大丈夫だ。リョーマが生まれてから、さすがに俺も気を使うようになったと思うが……」
「そうでした。だったら、安心してお出かけができるかな」
「なんだ、今から出かけるのか?」
ようやく冷凍庫を閉めた彼は、自分の部屋に戻っていこうとしていた周助を引き止めた。
「――まぁね。英二を連れて、夕飯のお買い物だよ」
「そうか。引き止めて悪かったな」
景吾は、諦めて再び冷凍庫を開けると、製氷器を取り出してきて水を注ぎいれていく。
「そうだ、周助。買い物に行くついでに、『練乳』を買ってきてくれ。そうだな、味はイチゴ味がいい」
「わかったよ」
周助は、2階の部屋で遊んでいるであろう英二を呼びに階段を上がっていった。
後編(渡邊家編)に続く
| 『真田家の懲りない面々』シリーズ
| 11:46
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2009.01.04 Sun
「あ、待ってよ、馨。そんなに引っ張らなくても……」
「痛かった?」
ハルヒの声に、彼は立ち止まる。
「い、痛くないけど、急に引っ張ったからビックリした」
「なんだ、そうだったのか」
そういいながら、馨はそっと手を離した。
「お、おいっ、おまえたち……いつのまに、急接近しているんだ?」
「え、おまえたちって??」
彼は、環の顔を見ている。
すると馨は、きょとんとした表情で彼を見ていると、背後から鏡夜の声がした。
「また、言っているのか、環」
どうやら、鏡夜の声は環の耳には届いていないらしい。
彼は馨のところまでやってくると、指を差しながら迫ってくる。
「『おまえたち』とは、馨とハルヒのことだ。ふと気がついたら、あんなに近くで引っ付いているじゃないかぁぁっ!」
「おい、環。そんなに興奮せんでも、ちゃんと聞こえている。もっと、静かにしてくれ。紅茶が不味くなるだろ」
慌てふためく環に、ソファに座っていた彼は冷静に応えながら、カップに注がれた紅茶を飲み干していた。
「きょ、鏡夜までそう言うのか……。それが、俺を竹馬の友と言っていたヤツの言い方なのか?」
「誰が、『竹馬の友』と言った?俺は、言った覚えはないぞ」
「もう忘れてるわけ?」
鏡夜は、顔を上げると彼の顔を見つめる。
「あのさ、殿。もう行ってもいい?」
馨は呆れた顔で二人を見ていたが、彼女が背中をポンポンと叩いた。
「もう、いいんじゃないの。鏡夜先輩と環先輩は、あんなに仲良さそうにしているみたいだから、あまり邪魔しないほうが……あっちに光もいるしさ」
「そうだよね」
ハルヒたちは、向こうで崇や光邦たちとはしゃいでいたところに向かうことにしたようである。
もちろん、そこには光も一緒にいた。
「光っ!」
「馨ぅぅぅっ」
光と馨は、ガッチリと抱き合う。
「ごめんね、光ぅぅぅっ……ほったらかしにしていて」
「全然、気にしてないよ。僕は、ハルヒが好きな馨も好きだからさ><」
何気に、ボーイズラブのような雰囲気が漂っている。
だが、このお話は決してボーイズタブではないんで、この程度までになります。
「そう言われているんだけど、ハルちゃんとしては複雑だよねぇぇ」
「別に、なんとも思わないですけど。光と馨は双子で仲もいいわけだし……気になりませんけど」
実に呆気らかんとした表情で、崇たちを見つめていた。
| 馨×ハルヒ『悩める少年馨くん』シリーズ
| 09:30
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2008.12.29 Mon
「それでは早速だが、今から環も含めてチェスの特訓を行う。環よ、覚悟はいいだろうな」
「いいよ」
環は、ケーキを食べながら応える。
すると横に立っていたハルヒは、きょとんとした表情で彼らを見ていた。
「チェスですか?自分は、そんなハイカラなゲームは知らないのですが……」
「ハルヒって、チェスを知らないのか?」
グチュッとケーキにフォークを突き刺したまま、彼はハルヒの顔を見上げる。
「ええ、まぁ……。将棋ぐらいなら、だいたいのことはしていますが、さすがにチェスは……」
平然と応える彼女の姿に慌てていたのは環であった。
「おい、鏡夜。これは大問題だぞ。チェスを知らないハルヒが『知力』にいていいのか?」
彼は、慌てふためきながら鏡夜に
「フフフ……そうだと思ってだな、ここに入門書から応用編までの本をそろえて置いた。おまえは、今日からこの本を見てすべて暗記しろ。実践は、それからだ」
ドッ、ドーンッ。
テーブルの上には、山積みにされたチェスに関する本が置かれていた。
「ヒィィィーッ」
彼女は、軽く悲鳴をあげた。
「まだ、この程度ならいいほうだぞハルヒ。環は、フランスにいた頃から男子の嗜みとして教育されたらしいからな」
「そうなんですか、環先輩?」
「そうだったかな……。そーいえば、負けこんで2,3日ほど夕飯抜きで倒れたことがあったっけ」
「ヒィィィーッ!自分には、む、む、無理です」
「心配するな、ハルヒ。それは単にアイツが油断しただけだ。おまえの賢さならすぐに理解するだろうからな。とにかく、俺が見込んだからには絶対に負けは許さない」
「わかりましたよ」
「まったく、鏡夜先輩も無茶なことをいうんだから……困っちゃうよ」
「むん、なんか言ったか?」
「いいえ、何にも……」
ハルヒは、山積みになった本を両手で抱えるとブツブツ言いながら更衣室に戻った。
「鏡夜も、無謀なことを言ったもんだよ。俺なら、あーゆうことは言わないけどな」
ケーキを食べ終えた環は、フォークを皿の上に置くと彼の顔を見る。
「俺は、無謀なことを言っていないつもりだが……」
「おまえの場合、ハルヒとの恋なんて果てしなく遠そうだよ……せっかく、急接近するかと思ったのに」
「フフフ……。さ、今から特訓するぞ、環」
鏡夜は意味深な笑みを浮かべながら、棚からクリスタルガラスで作られていたチェスのセットを取り出してきた。
| 鏡夜×ハルヒ『鏡夜の恋の行方』シリーズ
| 10:04
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2008.12.20 Sat
最後に残されたのは鏡夜と環である。
鏡夜は、暖炉の前に置いてあったロッキングチェアーに座って紅茶を飲んでいる。
「おい、おまえは部屋に行かないのか?夕飯までは、まだ時間があるから無理押しはしないが……」
「余裕そうだな鏡夜。俺はドキドキしているぞ」
「いや、そうでもないさ。ただ、おまえのように表面には出ないだけだ」
「そうなのか?(とても、そのようには見えないが)」
「だが、楽しみでもある。あの庶民のハルヒですら経験したことのないことを、俺たちも体験することになるのだからな。よく、経営者も承諾したものだよ」
鏡夜は、手に持っていた皿の上のティーカップを持ち上げると、熱さが消えた紅茶を一気に飲み干していく。
「そりゃ、するだろうよ。あそこのコンビニの経営者は、おまえの義兄である矢道さんの父親なんだからな」
環が真意をつくような話をすると、彼は一息ついてから応えた。
「ようするに、俺の親戚だといいたそうだな」
「そのとおりだ」
「残念ながら、顔は知らない。いや、扶裕美姉さんの結婚式の時に見たような気もするが――もう、忘れた」
「……ていうか、お前自身も、どーせ親戚だからなんとでもなると思っているのだろう……違うか?」
「少しはな。だが、このホスト部の連中のことだ。何が起きるかは、実際にやってみないとわからないのは、環だってぞれくらいの自覚はあるだろう」
「ま、まぁな」
逆に、彼は指摘すると、心当たりのある環は絶句してしまった。
しかし、そこで落ち込むような彼ではない。
「だが、鏡夜。俺には、もって生まれたこの美貌と品の良さがある……接客業は、ホスト部でも鍛えられているし……そうだろ?」
環は、彼の前で両手を広げるとキラキラと輝かせながら自身ありげに語り始める有様である。
「そうだな、ハハハ……(よくわからないが、おまえぐらいの自信があれば大丈夫だ)」
鏡夜は、苦笑いしながら妙な自信に満ちている環を見ていた。
終り
| 『アルバイトでGO』シリーズ
| 10:48
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2008.12.19 Fri
ソファでは、崇が眠たそうにしながら鏡夜がやって来るのを待っている。
やがて彼は、
「それでは、明日からのことについての説明だが、夕食後にこのリビングルームで行うつもりでいるから、ちゃんと集合するように」
『はーい』
ホスト部の面々は、元気よく右手を上げて応えた。
そして自分たちの手荷物を持つと、決められた部屋に向かうことに。
「……にしても、鏡夜先輩って、何をしようとしても手際よくしているというか……段取りがいいというか。まったく、すごいよね」
ハルヒは、双子たちと話しながら部屋に向かっている。
「決まっているじゃん。鏡夜先輩の段取りのよさは、殿のおかげだろうね……馨っv」
「それどういう意味?」
ハルヒをはさんで歩いていた馨は、ちょっと昔のことを思い出しながら話していたが、当の彼女は知らなかったようである。
すると今度は、反対側で歩いていた光がハルヒの腕をつかんで自分の方に向かせると話し始めた。
「ハルヒは、聞いたことなかったっけ?殿が、この桜蘭学院の中学部に転向して来た日のことなんだけど」
「さぁ、聞いたことないけど。なにかあったの?」
彼女は、右に左に向きながら彼らの話を聞いている。
「馨、殿はハルヒには話していないみたいだよ。どうする?話しちゃってもいいかな?」
「あのことでしょ……。別にいいんじゃないの。ここじゃマズイと思うんだけど」
「部屋ならいいよね」
「そうだね」
「あのさ、さっきから何をこそこそと話しているわけ?」
「殿と鏡夜先輩のことは、ここじゃちょっとマズイんだけど、部屋にいったら教えてあげるよ」
ようやく話し終えた光と馨は、真ん中にいたハルヒを見ると応えた。
「よくわかんないけど、あとで教えてくれるなら、それでもいいよ」
納得いかないものの、とりあえずあとで教えるといったことを信じて部屋に向かうことにした。
さて隆と光邦も、ソファで一休みしてから自分たちの部屋にむかった。
後編に続く
| 『アルバイトでGO』シリーズ
| 10:18
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2008.12.17 Wed
そうしていると、あれだけ盛り上がっていた宴会もお開きになりかけていた。
「最後に、藤岡くんに挨拶をしてもらいます。藤岡くん、ステージに来て挨拶してや」
「あ、はい」
ハルヒは忍足に呼ばれると、席を立ってステージの方に向かうとマイクを受け取った。
「えぇっ〜と……たった1週間でしたが、楽しく過ごすことができました。本当にありがとうございました。この良い経験を、今後の学生生活にいかしたいと思います」
彼女は挨拶を終えると、ペコリと頭を下げて席にもどっていく。
「あれ環先輩、どうしたんですか?さっきから、だんまりで」
「ああ、ちょっとあってな……」
「環先輩、雨がやんだら一緒に帰りませんか?」
「え?」
ようやく環は、ビックリしたように頭を上げて彼女の顔を見た。
「だから送迎会も終わりましたし、今から後片付けが終わったら、一緒に帰りましょう。鏡夜先輩もいかがですか?」
「俺は、遠慮しておくよ。せっかく橘が運転する車があるのでな」
「そうですか。それは残念です」
そういい終えるとハルヒは、立ち上がって片付けに言ってしまった。
「フフフ……(俺は、おまえがそう言ってくれて助かる)」
鏡夜は笑みを浮かべながら、残っていた飲み物を飲み干してしまうと、ティーカップをテーブルの上に起きてサッと立ち上がる。
「それじゃ、環。あとは、おまえに任せたぞ。責任を持ってハルヒを家まで送り届けてやるんだな」
「あ、わかった」
彼の肩をポンポンと叩くと、鏡夜は部屋を出た。
*
「お待たせしました」
やがて片づけが終わった彼女は、環のところにやって来る。
「それじゃ、帰ります?」
「あ、うん」
ハルヒが先に部室をでていくと、彼女のあとを追うようにして環が追いかけていく。
「あ、先輩?」
彼女は、立ち止まってクルリと振り返った。
「な、なんだぁ?」
「学校をでるまでは自分は『男』ですので、手をつなごうなんてしないでくださいよ。自分は、あと1日、学校に行かなきゃいけないんですから」
「――そうでした。危うく忘れるところでした」
環は、ハルヒの横に並ぶようにして一緒に歩いて学校を出た。
終り
| 環×ハルヒ『環の脳内妄想じゃない劇場』シリーズ
| 10:02
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2008.12.16 Tue
氷帝学園男子テニス部の部室――。
鏡夜と環を加えて、男子テニス部主催の送迎会が進んでいく。
忍足と向日の漫才のオンステージは続いて、鳳&宍戸や日吉たちによるカラオケ大会に移っていた。
「……あの二人って、仲が良さそうだな」
環は、ちゃっかりハルヒの横に座りながらスポットライトを浴びていた彼らを見ていた。
「そうなんですよ。まるで、環先輩と鏡夜先輩のようなものですよ」
「おい、ハルヒ。どうして、ここにきて俺を巻き込むんだ?」
「あれ、イヤでしたっけ??」
あっさりと否定する鏡夜に、彼女は横を向いた。
彼は、メガネのフレームを触りながらステージのほうを向いたままである。
「イヤとは言っていないが、俺は、環に付き合わされているだけだ」
「……とか言って、ここに座って一番満喫しているのは鏡夜先輩じゃないですか」
「そうだ、そうだ(ハルヒの言うとおりだ)」
環は、そう言いたげそうな表情で見ていたが、鏡夜の視線が自分に向くとサッと前を向いてしまった。
「環先輩も、自分の横に座っていないで、みんなと一緒に歌ってきてはいかがですか?」
「いやぁぁ〜〜さすがにハルヒのお願いであってもこればっかりはなぁ……。俺は、歌が苦手で。選択科目でも、一度も『音楽』を選択したことがないのだよ」
ハルヒからそういわれながらも、苦笑いしながらやむなく断わる環。
そのことに関しては、ご学友であった鏡夜も否定することはなかった。
「ハルヒ、やめておけ。環の歌声は、きょーれつだからな」
「そうなんですか(ちょっと意外だな)。それなら、無理押しはしませんが」
「そーなんだよ。幼稚舎にいたころだったか、初等科のころだったか忘れてしまったが、授業で歌を歌うことがあってな。そこで、こいつが歌った瞬間、窓ガラスにひびが入った」
「なるほど。そーゆうことがあったのですか」
少し残念そうな表情で諦めたハルヒであった。
「なんだ、残念そうな顔をしているが、そんなに歌って欲しかったのか?」
「少しだけ興味があっただけですが、やめたほうがいいのならそうしておきましょう」
「それが無難だ」
二人は、環に聞こえないように耳元で話していた。
「な、なんだ……鏡夜っ。こんなにハルヒと接近しているんだ?」
「別になんでもないよ」
――カチンッ。
「『別に』ってことはないだろう」
「何でもないから、何でもないんだよ」
「ぶぅぅぅっ」
「おい、環。そんな拗ねているのなら、おまえがしっかりとしたらどうだ。そうしないと、あそこで張り切っている忍足がかっさらっていかれても、俺は知らないからな」
「…………」
環は、ムッとしたまま彼の顔を見ていた。
後編に続く
| 環×ハルヒ『環の脳内妄想じゃない劇場』シリーズ
| 10:18
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2008.12.14 Sun
さて、中講堂に入ってきた千秋。
一般教養の講義だったことも手伝ってか、講義室の後ろのほうに座ると、コンビニで買い込んでいた紅茶のペットボトルのキャップをひねって開けていた。
「やぁ、今日は一般教養の講義のようだな」
「峯もか」
あまり親しい友人を作らなかった千秋であるが、同じ年に入学したヴァイオリン科の彼とは今も続いていたようである。
峰は彼の横に座る。
すると、彼は紅茶を飲んでいた千秋に話しかけた。
「はははぁ、そうなんだよ。俺はダブッているからな。また、やり直しだ」
「そう、気を落とすな。もう一年、ヴァイオリンのレッスンが受けられると思えば、得したじゃないか」
「それはイヤミか?」
「いや、俺がそう思っただけだから言っただけだ。言いすぎたのなら謝るよ。それよりも、留年して父さんは怒らなかったのか?」
「親父か?いや、別に怒らなかったぞ。それよりも、俺がクラシック一本でやるって言ったら泣いて喜んでいた」
彼は留年していることも気にしていない様子である。
あっけらかんと応える。
「そ、そうか……(フォローしたのが無駄だった)」
千秋は、表情を引き付けながら苦笑いしている。
そうとは思っていない峰は、カバンの中から蒸したての中華饅頭を出してきて食べ始めた。
「あ、千秋も食うか?自慢じゃないが、親父の作った中華饅頭は美味いぞ」
そうして、まだ湯気が出ていた中華饅頭を頬張っていた。
「いや。コンビニでサンドイッチを買ったからいいよ」
「珍しいな。朝ごはんを欠かすことのないおまえが、朝抜きだったなんて」
「まぁ昨日の夜なんだが、ちょっとあったんでな……」
彼は袋からサンドイッチを取り出して封を開けると、ゆっくりと食べ始めていく。
「……ひょっとして、また多賀谷とケンカでもしたとか?」
――ゲホッ、ゲホッ。
ズバッと痛いところをつかれた千秋は、サンドイッチを噎せた。
「図星じゃん。あの子は、気が強いからね」
「そーなんだよ」
千秋は、大きなため息をついた。
「で、おまえはどうなんだ?」
「なにが?」
彼は、峰の顔を見た。
すると中華饅頭を食べきった彼は、千秋の顔色を伺いながら尋ねる。
「また、あの子を許して、もとの鞘に収まるのか?」
「いや。そのつもりはない」
「おぉ、これは意外だな。それだったら、気にすることもないだろう」
「まぁな」
彼らは、遅い朝食を終えると講義に備えてテキストを見ていた。
終り
| 千秋×のだめ『シアワセの法則』シリーズ
| 10:05
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2008.12.13 Sat
「いいなぁ〜」
「私も引っ越ししちゃおうかな」
「……ていうか、真紀子って実家から通っているじゃない」
怜奈と真紀子は、のだめのことなどすっかり忘れてしまっている。
「あ、あのぉぉ〜ですね……。こんなに大きな声で話してちゃぁぁ〜聞こえちゃうよ」
「――そうだった」
ようやくのだめの言葉で、我に戻る彼女たちである。
しかし千秋は、すでにレジで会計を済ませて店を出て行こうとしていた。
「あ、千秋さんがぁぁ〜〜っ。の、のだめ。アンタに朝ごはんの調達を任せたわよっ!!」
「よろしくねぇっ!」
真紀子と怜奈は、彼のあとを追いかけて大学に行ってしまった。
のだめは、不思議そうな顔で彼女たちの後ろ姿を見送ると、いつものおにぎりや菓子パンをカゴの中に入れていく。
千秋が去ったあとの店内は、クラシックな音楽が流れている。
いや、ずっと流れていたのだが騒いでいた彼女たちの黄色い声で掻き消されていただけ。
やがて、商品をカゴに入れ終えると、のだめは清算を済ませてコンビニを出て行く。
そして、大きな袋を右手に持って学生たちが集まっているホールに向かった。
さて、彼を追いかけていた真紀子と怜奈。
大学にやってくると、目を歩いている千秋の姿を発見すると追いかけていった。
だがそのようなことも気づくことのない彼は、一般講義を受けるためにピアノ科の教室ではなく中講堂に歩いていく。
「なんだ、千秋さんってピアノ科の人だったんだ……」
「……てことは、私たちと同じってことよね」
「知らなかったわ」
二人は彼が講義室に入っていくのを見届けると、のだめが待っているであろう学生ホールに戻っていく。
「あ、のだめ!」
「どこに行っていたんだよぉぉぉ〜〜っ。もう、ぶぅぅぅ〜っ」
のだめは、唇を尖らせながらホールにやって来た二人の姿を迎えた。
「ごめん、ごめん」
「ごめんね、のだめ」
「ちゃんと、朝ごはんを買ったのにぃぃぃ……。ホールにはいないしさ」
怜奈と真紀子は、両手を合わして必死に謝るが、彼女はムッとさせたままであった。
「だって、あの千秋さんがさ、私たちと同じピアノ学科だなんて知らなかったんだもん……のだめは知っていた?」
「知らないけど。ていうか、隣に住んでいたことも、昨日まで知らなかったんだし」
「そうよね。知っていたら、気づかないはずがないし」
「そうそう。のだめって、そーゆうとこわかっていないことあるから」
「たしかに……」
彼女たちは、ベンチに座って朝ごはんであるおにぎりを食べ始めていたのだめの姿を見つめていた。
後編に続く
| 千秋×のだめ『シアワセの法則』シリーズ
| 10:02
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